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【BIM/CIM】【附属資料4】プロセス間連携における基準点の扱いの効果的な運用方法

 『3 次元モデル成果物作成要領(案)』は、詳細設計段階における成果物としての3 次元成果物の作成要領を定めたものであるが、建設生産プロセスにおける円滑なデータ連携のため、本附属資料においては詳細設計段階以外の段階を含めて基準点の効果的な運用方法を示している。そのため、本要領に基づく3次元モデル成果物の作成にあたっては、詳細設計に関する内容を抜粋して適用することとする。

 本附属資料は、3 次元モデル成果物を作成するうえで、公共基準点の引継ぎ方法を記載した参考資料である。

1.はじめに

 BIM/CIM モデルは、統合モデルの作成のみならず、GIS、国土交通データプラットフォーム等の多方面での利用が期待されている。このような利用場面においてBIM/CIM モデルの「位置および向き」は非常に重要である。一方で、BIM/CIM モデルが平面直角座標系上の座標値を持たないものがあり、統合モデルの作成に際してBIM/CIM モデルの「位置および向き」を合わせた統合は容易ではなく工夫が必要である。また、構造物の設置に用いられる仮BM 等の補助基準点は、経時的な変位、巨大地震等の地殻変動に際しても公的に管理されないため、維持管理段階における構造物の位置確認での精度が落ちる。

 これらを解決するためBIM/CIM モデルの「位置および向き」を設定するため、国土地理院が管理する電子基準点、三角点、水準点等ならびに国および地方自治体等が管理する基準点、街区三角点、街区多角点、水準点等を用いることとする。本附属資料では、これらを公共基準点と呼ぶこととする。

 BIM/CIM モデルの「位置および向き」を公共基準点で設定することはBIM/CIMモデルの統合だけではなく、DX の推進にあたり国土交通データプラットフォームでの利用、オルソ画像や点群データとの関連付けなど多方面での統一的な運用が期待できる。また、公共基準点を用いることで、地殻変動等が生じた際に、座標値の変化の迅速な把握が期待できる。

 測量、調査、設計、施工、維持管理の各段階において使用した公共基準点は、BIM/CIM 作成事前協議・引継書シートおよびBIM/CIM モデルを用いて、前工程から後工程に引継ぎを行うこととする。

2.用語の説明

本附属資料で用いる用語を表 2-1 に示す。

表 2-1 用語

番号用語説明
1公共基準点国土地理院が管理する電子基準点、一等三角点、二等三角点、 三等三角点、一等水準点、二等水準点、三等水準点、ならびに 国および地方自治体等が管理する 1 級基準点、2 級基準点、3 級 基準点、街区三角点、街区多角点、1 級水準点、2 級水準点、3 級水準点、をいう。
2公共基準点(A)BIM/CIM モデルの位置を定める公共基準点をいう。
3公共基準点(B)BIM/CIM モデルの向きを定める公共基準点をいう。

3.公共基準点の選定

 BIM/CIM モデルの作成にあたり、対象構造物の近傍にある公共基準点からBIM/CIM モデルの位置を定める公共基準点(A)、向きを定める公共基準点(B)の2 点を選定する。公共基準点の選定は、業務あるいは工事の実施に先立ち、発注者と受注者の協議で定めるものとする。


 公共基準点の選定は国土地理院が所管する基準点成果等閲覧サービス
 (https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/top.html)を参照すること。公共測量の諸手続が行われ国土地理院で審査された公共基準点のうち永久標識のみ登録されており、無届けの公共基準点や一時標識(主に4 級基準点)は登録されていない。
測量段階における公共基準点(A)および公共基準点(B)の選定においては、以下が望ましい。

① 測地成果2011(JGD2011)
 2011 年の東北地方太平洋沖地震の後に設置されている、または地震後に改測や改算が適切に行われていること
参考URL https://www.gsi.go.jp/sokuchikijun/jgd2000-2011.html

② 電子基準点との整合性が高い基準点
 電子基準点を既知点としていることおよび電子基準点と整合性が高い基準点を既知点としていることを設置当時の資料で確認すること。なお、街区三角点および街区多角点は、電子基準点との整合性が高い場合が多いが、設置当時の資料を確認すること。

③ 比較的最近設置された基準点または改測・改算により新しく成果改定された基準点

④ 成果表に「平成26 年4 月1 日付標高改定対応済み(または確認済み)」の記載がある基準点(国土地理院の三角点はすべて対応済みと判断して良い)
参考URL https://psgsv2.gsi.go.jp/koukyou/public/hyoukoukaitei/index.html

⑤ 公共基準点(A)および公共基準点(B)は、できるかぎり同じ作業内で設置された基準点

 設計、施工、維持管理の各段階における公共基準点(A)および公共基準点(B)の選定においては、以下が望ましい。

4.BIM/CIM モデル作成事前協議・引継書シートへの記載方法

 公共基準点について、BIM/CIM 活用ガイドライン(案)第1 編 共通編および基準点成果等閲覧サービスを参照し、以下の情報を示す。

a. 座標参照系
 座標参照系は、BIM/CIM 活用ガイドライン(案)第1 編 共通編 2.3 座標参照系・単位に示す識別子(例:JGD2011,TP/9(X,Y),H)を示す。

b. 公共基準点(A)および公共基準点(B)
 公共基準点(A)および公共基準点(B)のそれぞれについて、基準点成果等閲覧サービスに示す以下の情報を示す。以下に示す情報の説明は基準点成果等閲覧サービスに示すとおりとする。

 公共基準点の記載例を図 4-1 に示す。公共基準点の記載例は、基準点成果等閲覧サービスを参照する。
 公共基準点(A)は図 4-2 に示す点名「10A61」、公共基準点(B)は図 4-2 に示す点名「10A58」を例とする。公共基準点(A)および公共基準点(B)の点名・成果ID・等級は、図 4-2 の右上にある「公共基準点情報」から取得する。また、公共基準点(A)および公共基準点(B)の参照座標系、調製年月日、X 座標値、Y 座標値および標高は図 4-3 に示す公共基準点成果表から取得する。

別紙
BIM/CIMモデル作成 事前協議・引継書シート

整備局・事務所名 
事業名等 
段階  ※測量地質・土質調査
事前協議時/納品時の別事前協議時納品時事前協議時納品時
記入日(年月日)    
基本情報    
業務・工事名    
工期    
発注者担当課    
職員    
受注者会社名    
技術者    
座標参照系 JGD2011,TP/9(X,Y),H  
公共基準点(A)点名 10A61  
成果ID 8095932  
等級 3級  
調製年月日(成果表) 2013/4/25  
X座標値(m) -36070.539  
Y座標値(m) -7413.511  
標高(m) 7.409  
公共基準点(B)点名 10A58  
成果ID 8095929  
等級 3級  
調製年月日(成果表) 2013/4/25  
X座標値(m) -35886.248  
Y座標値(m) -7614.359  
標高(m) 15.098  

図 4-1 BIM/CIM モデル作成事前協議・引継書シートへの記載例

出典:基準点成果等閲覧サービス https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/top.html
図 4-2 公共基準点に関する情報の取得

出典:基準点成果等閲覧サービス https://sokuseikagis1.gsi.go.jp/top.html
図 4-3 公共基準点成果表の例(調製年月日等の確認)

5.BIM/CIM モデルへの記載方法

 BIM/CIM モデルは、BIM/CIM モデル作成事前協議・引継書シートに記載の公共基準点を「基準点オブジェクト」として作成する。BIM/CIM モデル作成事前協議・引継書シートに記載した情報は、「基準点オブジェクト」の属性情報とする。
 「基準点オブジェクト」を作成するBIM/CIM モデルは、位置情報が関連するすべてのBIM/CIM モデル(地形モデル、構造物モデル、土工形状モデル、その他)内に作成する。

 基準点オブジェクトの形状は以下が望ましい。

 3 次元表示の場合の例を図 5-1 に示す。測量成果簿に基づいて設定した公共基準点(A)および公共基準点(B)を、逆円錐の形状で示している。BIM/CIM モデル作成事前協議・引継書シートに示す情報(図 4-1)は属性情報として登録する。
 ソフトウェアがアノテーションとして文字を示す機能がある場合は、図 5-1 のように逆円錐の形状の上部に示す「公共基準点(A)」および「公共基準点(B)」を表示することが望ましい。

図 5-1 3 次元表示の場合の例TREND-CORE Ver.7(福井コンピュータ提供)

2 次元表示の場合の例を図 5-2 に示す。測量成果簿に基づいて設定した公共基準点(A)および公共基準点(B)を、三角形の形状で示している。BIM/CIM モデル作成事前協議・引継書シートに示す情報(図 4-1)は属性情報として登録する。
ソフトウェアが、3 次元表示と2 次元表示を切り替える機能がある場合は、図 5-2 のように公共基準点を三角形等で表示することが望ましい。

図 5-2 2 次元表示の場合の例Autodesk Civil 3D(オートデスク提供)

6.【参考】基準点を用いたBIM/CIM モデルの統合のイメージ

 橋梁を事例として、基準点を用いたBIM/CIM モデルの統合のイメージを示す。小座標系で作成した橋梁上部構造物のBIM/CIM モデルと大座標系で作成した橋梁下部構造物があり、基準点に基づいて統合モデル(図 6-1)を作成する。


図 6-1 基準点を用いた統合イメージ

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